「する」が特徴の
仮想空間を活用した
産学連携による新規事業開発

スマートシティ、デジタルツイン、遠隔医療。
5G・6Gによる通信の高速・大容量化を見越して
仮想空間の検討が様々される中、
現実をもっと便利にするための手段として
「見る」ではなく「する」が特徴の仮想空間の
活用が
産学連携で進みつつあります。

※仮想空間=コンピューターで計算して作ったデジタルな空間

仮想空間だからこそできること

デジタルな空間である仮想空間では、
テクノロジーによる様々なアシストを
受けることができるので、
現実では不可能な様々なことを可能にできます。

バーチャル技術を活用すれば
体験そのものの進化が可能

Case.01

本田技研工業株式会社様

外観品質検査

×仮想空間

現実では不可能なことも可能になる
“次世代型のものづくり”

新しい技術の活用方法を
若手からベテランまで全員で検討

技術の進化や世の中の変化にあわせ、ものづくりも変わっていかなければいけない。我々はそうした考えを持ちながら、新しい技術をいち早く取り入れ、検証し、次世代のものづくりの在り方を常に模索しています。仮想空間はそうした取り組みを進める上での選択肢のひとつでした。検討を開始したのは数年前から。どういう活用が考えられるか、ものづくりに詳しいベテランだけではなく、常識にとらわれず“そもそも”からアイデアを出せる若手にもリードしてもらいながら、全員で検討を進めていきました。

ものづくり×仮想空間の可能性

我々の主な業務はものづくり。ですので、現実にはないものを取り扱えるようになる仮想空間の技術と、現実とは切っても切り離せない我々の事業との相性は、一見すると良くないように見えるかもしれません。しかし、仮想空間を知れば知るほど、現実のものづくりにおける非効率な部分が見えてきたり、現実では物理的に実現不可能なので検討すらしてこなかったことに可能性が見いだせたり、様々な機会の発見つながりました。現実×仮想空間によってものづくりがもっと便利に進化する。これは不可能な話ではないと思います。

現実では検査条件を揃えることが困難で品質判断に差が生じやすい

現実における検査の物理的な限界

現在、イマクリエイトさんとは、まさにそんな現実のものづくりの不便さを解消し、ものづくりを一段、二段とレベルアップさせるような仮想空間の研究を進めています。例えば仮想空間で行う外観品質検査。外観品質検査とは、車体の表面にへこみやゆがみなどがないかを確認するための検査です。検査担当者個人の主観性を排除するためにも、確認する立ち位置・目線の高さ・角度など、検査条件を完全に揃えた状態で、同時に複数人で検査できることが理想ですが、もちろんそんなことは現実では不可能。

仮想空間で行う外観品質検査

実用化を目指して

しかし、物理的な制約が無い仮想空間であればこれを可能にできますし、前回の検査と完全に同じ条件で検査することも可能になります。このように、現実では不可能なことを可能にできるのが仮想空間ならではの強みでしょう。どう運用していくかのスキームの確立も含め、実用化にはまだまだ課題も多いですが、お客様へのより良い価値提供につなげていくべく、ホンダらしいチャレンジを続けていきたいですね。

Case.02

住友商事株式会社様
InnoJin株式会社様

小児向け弱視治療

×仮想空間

医師が患者に処方できる
仮想空間を活用した治療用アプリの実現を目指して

※デジタル技術を活用して特定の疾患の治療を行うソフトウェア

小児向け弱視治療における課題

弱視とは眼鏡等で視力を矯正しても視力が十分に出ない状態をさします。弱視の治療には専用の眼鏡を装用して視機能の発達を促す治療を行いますが、それでも視力の回復効果が見られない場合、アイパッチなどで視力が良いほうの眼を覆い、弱視の眼を強制的に使う治療を行います。しかし小児弱視の場合は、片方の眼をふさぐことによる見えにくさを嫌う子どもが多く、コンプライアンス(※患者が医療従事者の指示の通りに治療を受けること)が低下し治療効果が下がってしまうケースがあるのが課題です。

デジタルデバイスによる
弱視治療と課題

そこで、デジタルデバイスを活用した治療の研究が進んでいます。これは患者がディスプレイつきのゴーグル型デバイスを装用し、そこに投影された映像を見ながら進める治療。患者は片方の眼を覆う必要がなく、医師も患者の自宅での治療時間をデータで把握できます。一方、弱視の治療に最も効率的なのは眼と手の共同運動なのですが、これができないのは依然として課題です。例えば手でモノを掴む際にはまず眼が対象までの距離や大きさ等を測りますが、このような“対象を立体的に捉える力”は、画面という平面を見るデジタルデバイスはもちろん、ただ漠然とアイパッチをつけているだけでは養えません。

仮想空間で行う弱視治療のイメージ(左右の眼の見え方を変えて治療を行う)

これまでにない「する」を特徴とした
治療法への期待

こうした背景からイマクリエイト様の「するXR」という技術に興味を持ちました。「見る」だけでなく現実のように身体をつかって「する」ことが特徴のバーチャル空間上の体験を弱視治療に活かせれば、片方の眼を覆わず、患者の自宅での治療時間を把握でき、しかも眼と手の共同運動もできる、従来の弱視治療が抱える課題を解決した治療が可能になるのではないかと。子どもが自然と夢中になれる体験を提供できれば高い治療効果も期待できます。

薬機法に基づく医療機器承認取得を進め、2027年度内の承認申請を目指す

医師が処方できる
治療用アプリを目指して

仮想空間は現実をさらに便利にカスタマイズできるデジタル技術というイメージです。自由度が高いからこそアイデア次第で様々な課題を解決できる可能性を秘めていると思います。一方、技術が先行し安全性をはじめとした医学的エビデンスが遅れているのが現状。そのため、しっかりとしたエビデンスを確立するため腰を据えた検証が必要です。我々が目指しているのは開発した弱視の治療用アプリが実際に病院で患者に処方される未来の実現。しっかりと研究・開発に取り組んでいくつもりです。

Case.03

富士フイルムシステムサービス
株式会社様

薬学部生向けトレーニング

×仮想空間

仮想空間を活用した、
次世代型の医療系人材教育

新型コロナウイルスの拡大を受け
新しい教育手法を検討

医療系人材の育成には、座学だけでなく実践形式の学習機会が欠かせません。しかし新型コロナウイルスの拡大によって学生の学習機会に大きな制限がかかりました。このような状況から、医療系人材の教育には、教育手法の高度化や新たな技術の開発・導入が求められています。

薬剤師の業務の一例

現実の教育には様々な不便があった

あたかも現実のような実践形式の学習を本当に仮想空間で行うことができれば、非対面・非接触で時間や場所を問わない学習機会を提供できるのではないかと考え、検討を進めました。検討を進める中で、現実で行う実践形式の学習は様々な面で負担が大きかったことにも気が付きましたね。例えば、教員がかならず学生に付き添う必要があったり、模擬患者への負担を要する実習は気軽に何度もできなかったり、学習のたびに設備や道具を準備する必要があったり。しかし、現実では絶対に無視できないことであっても仮想空間では無視できる。仮想空間を知れば知るほど、活用方法は本当に様々考えることができるので、今までの常識を一から見直しながら構想を膨らませていきました。

仮想空間で行う薬剤師の業務

事業化を目標に各大学への販売も開始

まずは薬学部生を対象にした実践形式の学習コンテンツを神戸学院大学様と共同で開発しました。360度動画のようにその場にいるかのような視点で「見る」のではなく、現実で行う学習のように自分の身体を使いながら進めていく体験性が特徴です。今後、様々な効果の検証を進めていきますが、多くの薬科大・薬学部の方々にもご利用頂けるよう、販売体制も構築しました。

次世代型の教育手段として
仮想空間に寄せる期待

仮想空間はそれ自体が発展途上の技術。ただ、本当に現実の代替手段として使えるようになれば、教育の質を大きく高めることができると期待しています。薬学だけではなく、看護師、理学療法士など、他にも応用ができると思っていますし、ユースケースを我々が作るという気持ちで、積極的に検討を進めていくつもりです。

Case.04

株式会社コベルコE&M様

溶 接

×仮想空間

半信半疑からはじまったVR技能訓練。
熟練者が認めた体験性、今では海外展開へ

物理的に解決できない
溶接特有の難しさ

コベルコE&Mでは、技能職機械系の新入社員に対して毎年溶接実習を行っています。溶接実習は、溶接時の強烈な光で手元が見えにくかったり、消耗品を都度都度用意する必要があったり、研修生にとっても企業にとっても、様々な難しさがありました。

イマクリエイトと共同で提供している、仮想空間で溶接の技術習得を行う『ナップ溶接トレーニング』

仮想空間を活用すれば
解決できるのではないか?

そんな中、現実と同じような体験性が特徴の「するXR」を体験させて頂き、この技術を活用して溶接のトレーニングを仮想空間でできるようになれば、様々な難しさを解消させたより良い研修機会を提供できるのではないかと感じました。

現実の溶接現場で行う研修受講者(実技組)と『ナップ溶接トレーニング』の受講者(VR組)の習熟度を比較、現実以上の効果性があることを確認

効果性を確認、すぐに事業化へ

最初は弊社の溶接技能者もVRでの溶接訓練に、半信半疑でしたね。「仮想空間で溶接をする」なんてことが本当にできるのかと。ただ、フタをあけてみれば我々の熟練溶接工のこだわりを詰め込んだ仕上がりに。検証したところ、現実組よりもVR組のほうが習熟効果も高い。自社の技能トレーニングとして使えるという確認ができたので、トレーニングコンテンツとして国内での販売を開始。お客様のご意見を踏まえて機能改修を重ね、2023年からは海外展開も開始しました。

新しい価値提供を目指して試行錯誤

仮想空間は近年話題にあがることも多いものですが、技術的な流行りものとしてではなく、課題を解決できる技術を選定するという視点で進めています。弊社には長年培った技能があり、革新的な手法で課題解決ができれば、お客様や世の中に十分に新しい価値を提供できると考えています。
事例らしい事例もなく、手探りな部分も多いですが、空間全てでテクノロジーによるアシストを受けられる仮想空間は、これまで物理的に不可能だったことも可能にできるポテンシャルがある技術だと感じています。世界に先駆けて、次世代の技能訓練の在り方を模索していきたいですね。

Case.05

法務省様

職業訓練

×仮想空間

現実と同等以上の効果が期待できる
“次世代の職業訓練”

より良い職業訓練を実現するために
テクノロジーの活用を模索

我々が所属する法務省の矯正局は、全国の刑務所を管轄しています。刑務所では、罪を犯し、刑務所に収容されている受刑者の改善更生、社会復帰のために様々な矯正処遇を実施しています。「職業訓練」はその中のひとつ。ひらたくいえば、“受刑者が釈放後スムーズに仕事に就くことができるよう受刑期間中に何かしらのスキルを身につけられるような訓練を行う”ということです。再犯の防止のために就労の確保が非常に重要であることは、統計からも明らかになっており、そのために、受刑中に就労に結びつくスキルを獲得する職業訓練は大切です。ただし、これは簡単なことではありません。通常、資格取得のためには、専門の学校や訓練施設に通うことになりますが、受刑者の場合、刑務所の外に出すことが簡単にはできません。逃走等を防止するため、刑務官が同行しますし、受刑者のプライバシーへの配慮等も必要になります。また、刑務所の中で職業訓練を行うにしても、訓練ごとに専門の設備や機材を用意しなければいけない問題もあります。様々な課題がある中で、より良い職業訓練を実現するための手法として、新しいテクノロジーの活用を模索していました。

コンセプトは “次世代型の職業訓練”

そこで注目したのがXR技術です。「仮想空間内で職業訓練を行えないか?」と考えました。仮想空間の中で職業訓練を完結させることができれば、受刑者を刑務所の外に出すこともありませんし、刑務所内に搬入することができないような大きな設備や機材が必要となる訓練であったとしても、物品のサイズや重さ・量などに関する現実的な問題は仮想空間の中では気にする必要はありません。ほかにも、設備・機材の維持管理や職員が行う訓練の準備などにかかるコスト削減も期待できる、XRは従来の課題を克服した次世代型の職業訓練の実現につながる技術だと判断をしました。

VRで訓練を行った人と2D動画で訓練を行った人とで訓練の理解度を比較。「VRで学習するほうが2D動画で学習するよりも理解度が高まる」ということが、統計的にも有意差があるかたちで認められた。

統計的にも有意差があるかたちで認められた効果性

とはいえ、今のXR技術はまだまだ発展途上です。思い描いているような次世代型の職業訓練が実現できるかは未知数です。そこで、第一歩として、「XR技術というものがどんなもので、どれほどのポテンシャルがありそうなのか」を確認するために、まずは職業訓練コンテンツを小さく作ってみることから始めました。技術評価用のコンテンツ開発をお願いすることになったイマクリエイト様は、「仮想空間で現実をもっと便利にしていく」という視点で研究・開発に取り組んでいる点が印象的でした。技術的に仮想空間内で職業訓練を実施できたとしても、現実空間で行う訓練よりも効果が落ちては意味がありません。そのため、検討フェーズの評価ポイントの1つに「効果性」を設定していたのですが、我々が開発をお願いしたコンテンツでも「仮想空間で行う訓練は効果がある」というデータが統計的に有意な結果として得られたのは良かったポイントの一つです。

1つのデバイスで複数の職業訓練ができる未来の実現に向けて

理想として描いているのは、XRデバイスが1つあれば、様々な職業訓練ができる未来。アプリとして様々な訓練をデバイスにダウンロードしておくことで、“時間や場所を選ばず好きなときに好きな訓練を実施できる”という未来です。これが実現できれば、設備や機材の準備をする必要はなくなりますし、職業訓練を実施するハードルは今とは比較にならないほど下がり、より多くの受刑者に職業訓練の機会を付与することができます。また、イマクリエイト様の実験では、「仮想空間で行う職業訓練は意欲的に取り組むことができる」というデータも得られているので、受刑者の改善更生の意欲の喚起といった意味でも、より良い職業訓練が実現できるのではないかと期待を寄せています。
さらに、XR技術は、職業訓練に限らず、様々な矯正処遇の場面で活用できる可能性を秘めています。活用場面を広げるに当たっては、技術的なハードルを含め、様々な制約をクリアしなければなりませんが、職業訓練を皮切りに、引き続きXR技術の活用方法を模索していきたいと考えています。

技術評価のために開発した職業訓練コンテンツ。“玉掛け”という作業に必要な技術を仮想空間の中で学ぶことができる。特別な設備や道具を用意しなくてもよく、作業の手順や危険なポイントを自分の体を使いながら学習できる。

イマクリエイトとは

イマクリエイトは身体性のある
XR
研究開発と社会実装に
取り組むスタートアップ

「見る」ではなく「する」が特徴の、
本や動画では
得られない体験性がある仮想空間の開発力が強みです。

※XR:AR/VR/MRの総称

主な実績

2022年
・東京都主催 「Tokyo Contents Business Award」  優秀賞受賞
・総額1.8億円の資金調達(シリーズA)
2023年

・Oculus for Business ISV Program参加

現実を便利にする
仮想空間の社会実装を
効果性を重視しながら
産学連携で推進

東京大学稲見教授を技術顧問に東京大学社会人ドクターのCTOが先端技術を研究。
様々な投資家の支えを受けながら、ビジネスサイドが社会実装を進める体制です。

CTO

川崎 仁史

東京大学 稲見研究室
社会人ドクター

技術顧問

稲見 昌彦

東京大学 総長特任補佐 先端科学技術研究センター 副所長・教授

投資家

古川 圭祐

東京大学協創プラットフォーム開発 パートナー

牧野 成将

Monozukuri Ventures CEO

守屋 実

新規事業家

湯川 恭光

ナエドコ CEO

研究事例

イマクリエイトが目指しているのは、
「現実でやってみる」のほかに
「仮想空間でやってみる」という選択肢を
用意することで、時間や場所に縛られず、
誰もが「知る機会」だけでなく「する機会」を
享受できるようにすること。
そのビジョンの実現に向けて、仮想空間の活用を様々なアプローチから研究を進めています。

研究事例

01

するAR

ゴルフ

AR技術を活用することで、テクノロジーによる様々なアシストを仮想空間に入らなくても得られるようにする研究。現実空間に動画や静止画を表示することが可能なので、自分の動きをその場で録画して目の前で再生したり、自分の動きが良かったのかどうかをその場でシステムに評価してもらうなどの用途が期待できる。

ARデバイスを着用しながらゴルフ

自分の動きやお手本などを目の前に表示できる

研究事例

02

するAR

VRChat

既存サービス上に「する」が特徴の体験を実装する研究。時間や場所や設備といった物理的な制約がない仮想空間で様々な身体性のある体験をできるようにする「するXR」を既存の仮想空間サービス上に実装することで、最小の工数・予算での「するXR」の提供が期待できる。

動作を伴う現実のような体験をVRChatに実装

道具や設備が必要な体験も再現できる

研究事例

03

仮想空間

ロボティクス

仮想空間内で人が行った動作と同じ動作をロボットに行わせるシステムの研究。これによって、例えば手術などの精密性が求められる作業を、対象を拡大・縮小するなど作業しやすいようにカスタマイズした仮想空間内で人が行い、実作業はロボットに行わせる、ということが可能になり、作業の実施ハードルの低減が期待できる。

仮想空間内で作業をする様子

人の動きにあわせて動くロボット

様々な角度から仮想空間の
活用を検討しています。
お気軽にお問合せください。

その他検討・研究内容の一例

各種仮想空間技術
VR、AR、MR
各種活用例
トレーニング、
シミュレーションなど
各種デバイス
ヘッドセット型
(例 : Meta Quest 3、 Meta Quest 2、 Meta Quest Pro、 PICO 4、Varjo XR-3)
メガネ型
(例 : HoloLends 2、Magic Leap 2、HTC VIVE XR Elite)
グローブ型
(例 : Manus)
応用技術
ロボティクス、AIなど